あなたはヤングケアラー(子どもケアラー)を知っていますか
堀越栄子【日本女子大学名誉教授 一般社団法人日本ケアラー連盟代表理事】
誰もが介護する・される少子高齢社会においては、ケアラー(介護者)は多様であり、ヤングケアラーや、育児と介護を同時に担うダブルケアラー、複数の人のケアを担う多重介護者が注目されている。
ヤングケアラーとは、「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」(日本ケアラー連盟)である。彼らが担っている家事や介護は、その量からも内容からも、「お手伝い」の範疇にはおさまらないものである。
介護のために体調不良に陥り、高校を中退して祖母を介護したAさんは、「ぼくは祖母の介護とひきかえに、友だち、学業、仕事、そして時間を失った。ほんとうは自分を理解してくれるひとがほしかった。『だれか、助けて』と叫びたかった。看とったあと、まわりからは『おばあちゃんは、孫に介護してもらって幸せだったね』と言われたが、ぼくがほんとうに欲しかったのは、ぼくと祖母の幸せが両立できる生活だった。」「誰かに代わってもらえるなら、代わってほしかったです。(中略)10代で介護・家事をする私を支えてくれるサービスはありませんでした。(『地域ケアリング』Vol.16 No.1より)」と述べている。
宮川氏、濱島氏が日本で初めて行なった大阪府下の公立高校10校の高校生調査(回答5,246票)では、20人に1人の高校生が家族をケアしていると回答している。うち7割は中学生のときから、4割は小学生のときから介護を開始している。ケアしている相手は祖母47.8%、祖父22.6%、きょうだい21.9%、母親20.4%、父親10%である。ケアの内容は、家事43.4%、力仕事40%、外出時の介助・つきそい34.7%と続く。
3分の1の高校生ケアラーは毎日ケアをしており、学校がある日のケア時間は、約7人にひとりは4時間以上、「学校がない日」のケア時間は、5人に1人弱は6時間以上である。「ケアをしていることを家族以外のだれかに話したことがある」高校生は約半数(45.2%)で、話している相手は友人が多い。高校生ケアラーは孤立している。
ヤングケアラーは、ケアを担うことで得るものもあるが、学ぶことや遊ぶこと、心身の健康、友人との関係、生活等にマイナスの影響を受け、将来の選択に大きな影響を及ぼすこともあり、「こどもの人権」に関わる問題である。ヤングケアラーが、成長途上にある「子ども」として「あたりまえに」過ごし、成長し、自分の人生を切り拓いていくことができる環境を整えるには、まず、実態を把握し、家庭や学校を始め、社会全体で早急にとりくむ必要がある。
(生活経済政策2019年12月号掲載)