若き気候変動アクティビストたち
三浦まり【上智大学法学部教授】
台風19号の爪痕が広範囲にわたり残るなか、気候変動の影響が本格的に現れる時代に突入したのだという実感にとらわれている。
昨年来からヨーロッパやアメリカで拡大した若者による気候変動への抗議活動は、今年9月の国連気候変動サミットにグレダ・トゥーンベリさんが出席したことで、日本でもようやく報道されるようになってきた。気候正義を求めて毎週金曜日にデモを行う「未来のための金曜日」はスウェーデンを発祥とし世界大に拡大した。アメリカではジェイミー・マルゴリンが15歳の時に設立した「ゼロ・アワー」も注目を浴びている。アメリカ史上最年少の下院議員アレクサンドリア・オカシア=コルテスはグリーン・ディールの旗振り役となっている。
若い気候変動アクティビストたちの主張に耳を傾けると、温室効果ガス排出削減やプラスチックごみ減量などの個別の対策のみならず、現代文明への徹底的な批判、価値観の根本的転換を求めていることに斬新さを感じる。マルゴリンは環境問題の背景に、植民地主義、家父長制、女性差別、人種差別があることを指摘するが、これらを貫くのは資源を搾取・収奪してよいという発想であろう。地球および人間を搾取・収奪することによる富の独占への抵抗が、気候変動への抗議活動の基底に横たわるのだ。
先頭に立っているのがほとんど女性であるということも、注目すべき点だ。環境保護運動のベースにフェミニズムがあり、日本では1980年代後半に下火になったエコ・フェミニズムが欧米では90年代以降も多様な論争へと発展し、それらの蓄積が若い世代の状況認識に影響を与えているのだろう。
東電福島第一原発の事故は母親たちによる放射能から子どもを守る会を各地に出現させた。度重なる台風被害は、次世代の気候変動アクティビストを生みだすに違いない。未来への責任を負う10代の主張に、大人はもっと耳を傾ける必要があるのではないだろうか。気候変動のような過去の想定が役に立ちにくい状況においては、そして高齢化の進展が激しい日本においてはなお一層、「老いては子に従え」を胸に刻みたい。
(生活経済政策2019年11月号掲載)