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明日への視角

人口減少社会における自治体とは

川本淳【全日本自治団体労働組合中央執行委員長】

 少子高齢化が叫ばれて久しい今日、2014年には日本創生会議の提言の中で「消滅可能性896自治体」が大きな話題を呼んだ。そして、2018年総務省「自治体戦略2040構想研究会」第一次・第二次報告がまとめられた。
 概要は2040年頃までの人口の動向・人口段階別市区町村の変動を推計し、①子育て・教育、②医療・介護、③インフラ・公共交通、④空間管理・防災、⑤労働力、⑥産業・テクノロジーの個別分野の課題を明らかにしたうえで、「2040年頃に迫る危機とその対応」、さらには「新たな自治体行政の基本的考え方」を取りまとめたものとなっている。
 日本が乗り越えなければならない「2040年問題」に対する、ひとつの問題提起として受け止めるが、報告は違和感を強く感じる。
 それは、「地方のかたち」をつくることを進めようとしている割に、どうも現場で働いている人の声が盛り込まれていないのではないかと感じることだ。
 国主導で思い出すのは市町村合併。財政健全化を声高にアピールし、市町村にその選択を迫り、合併する・しない、人件費の削減、民営化、独法化、広域連携、自治体間連携等さまざまな手法で市町村はその苦難を乗り越えてきたが、市町村合併が残したものは、何であったか十分に総括されているとは言い難い。
 また、その結果、国の財政は健全化の道を歩んでいるのか。
 その後、市町村の生き残りをかけさせるような「ふるさと創生」という名の勝者のない自治体間の競争が国の力で後押しされた。その結果が今日の状況だ。
 そして今度は「2040年構想」で「自治体行政の標準化・共通化」とある。
 市町村は政令市から町村まで行政規模の幅は広い。立地も大きく異なり主要産業も様々だ。もちろん市町村が向き合うべき課題も「多様」である。
 本来求められるのは、市町村から発せられる要望に、どう弾力的に答えていくかという国の柔軟性ではないのか。
 今後、第32次地方制度調査会で、地方行政体制のあり方などが議論されていくこととなるが、市町村の声を反映した議論がされなければ、この国の将来は決して明るくならない。現場で住民と直接向き合っているのは、市町村なのだから。

生活経済政策2018年9月号掲載