環境問題へ世代責任果たす
加藤友康(NTT労働組合委員長・生活研副会長)
今、国際社会は経済・環境等、危機的状況に陥っているが、米国の新大統領の出現により、世界がどう変化していくのか大いに注目される。その一方で、米国の政治的・経済的影響力が低下し、中国・インドの台頭により、世界は多極化・無極化とも表現される新たな秩序形成へ向かっている。
とりわけ危険水域を越えた環境破壊はグローバルに深刻さを増し、先進国と開発途上国との差異ある責任と現実、自由・市場原理主義から新たなシステム構築への厳しい道程とも深く関わる課題でもある。
『京都議定書』の実効がほど遠い状況の中で、資源・エネルギー・食糧・雇用、そして利潤追求とコスト、開発と貧困など、すべての分野に関わるだけでなく、環境破壊は人間の活動・進化と併走し、地球温暖化は解氷・海面上昇、異常気象と大災害、さらに動・植物はじめ魚類までのあらゆる生命体が危機に瀕し、人間誰でもが加害者と被害者の立場にいる。
環境問題については、労働界も社会的組織として重要視した取り組みが求められている。ITUC(国際労働組合総連合)は、『京都議定書』による環境政策の実施が雇用に重大な影響を及ぼすとの立場から採択できなかったが、深刻な問題としてコンセンサスを図り、雇用問題と並行して「ポスト京都」への歩みを始めており、社会正義を標榜する組織として、さらに積極的な姿勢で望むべきであろう。
さらに、日本の労働組合は、対置する会社側へ積極的な環境政策の推進による企業責任を求めるべきである。とりわけ、NTTグループは二つの側面でその役割を十分果たすべきである。
一つは、情報通信・サービス分野は、直接電力を使用し、年間85.4億KWを消費しており、その削減を早期に図ること。
二つは、ICT(情報通信技術)は、企業活動・医療・教育・災害・防犯・家庭生活のすべてに影響を及ぼす。ICTの普及により、人・モノの移動・道路交通情報・電子ペーパーをはじめ、自然災害への環境観測など、ワークスタイル・ライフスタイルの転換を促し、「グリーンIT」による大幅なCO2削減効果を着実に高めていかなければならない。
そして、私たち一人ひとりが、次代の子供たちに輝きを引き継ぐ世代責任を果たす役割を、実践・実証しなければならない。
(生活経済政策2009年1月号掲載)